自然の環境を小さな鉢にまとめてしまうことは、植物にとって負担にはならないのですか?
「植物はとてもたくましくて、生きていくために環境に適応するんですね。根を大きく張れない場所だとわかると、大きな葉をつけずに、根とのバランスを取りながら育つんですよ」
自然を人工的に作ったものが盆栽なのでしょうか。
「その逆ですね。盆栽は、自然の一部を切り取ったもの。たとえば川の中州に石があって、その隙間の苔に何かの種が落ちて芽が出てくる。そんな石の詰まった狭い場所に、大きな木は育たないですよね。盆栽は、そんな自然の摂理を手元で表現して、お盆の上で楽しもうとしたもの。だから盆栽は自然であればあるほど味が出るんです」

小さな盆の中に森羅万象がある。
「すべてが完結した、小宇宙ですよね。この風知草の苔玉も、もとは鉢植えだったのですが、鉢から出して水につけておくと、葉の部分が少しずつ下から生えてきて、自然に丸くなっていくんです。この形になるまで、五、六年は掛かりますが、自然にまかせてできた雑木林のような世界が生まれる」
作為的であって、作為的には不可能な世界。深いです。
「そうですね。たとえばこの鉢の植物は、もとから植えたものではなくてまわりの鉢やどこかからか飛んできた種が落ちて芽を出したもの。そんな風に、盆栽には偶然が作り出す物語がある。鉢に五種類の植物を植えても、季節を重ねるごとに、大きく張り出すものもあれば、弱っていくものもある。手を掛けながら、人の手では作れないような世界ができることが、盆栽を育てる魅力です」
苔玉や盆栽を眺めながら、過ごすひととき。贅沢な時間です。
「盆栽を手に取っていろいろな角度から眺めると、手のひらのミクロコスモスとでも言うのかな。いつかどこかで見たような、自然の風景が広がっています。じっくりと作り込めばさらに味わいが出るので、季節の移り変わりを楽しむように、時間をかけて、鉢の様変わりを楽しんでほしいですね。